もう一度カイナシティをぐるりと探してみたは、肩に乗せたネイティと揃って疲れ果てたため息をついた。
「……見つかんねえ………」






9.スタートダッシュの号砲




 3回目に訪れたコンテスト会場でようやくルビーを見つけたは、声をかけようとした瞬間ざわめいた乱雑な殺気に反応して足を止めた。
 周囲を気にすることなくただ目的だけを求めるその粗暴な気配には覚えがある。何しろさっきそういう気配をした男女を見たばかりだ。
 出所を確かめようとする前に木の実ブレンダーを囲んでいたルビーたちをトータスが襲い、その噴煙によって意識を失った彼らがさっきの赤装束に連れ去られていく。そこまでを見た彼は、その時点で(あくまでこの街で)ルビーと合流することをあきらめた。
 今自分が出ていっても何のプラス要素にもならないし、第一はあまりおおっぴらに人助けができない立場にある。険しい表情をして肩を占領していたネイティと眼を見交わして、青年は騒然とし始めたコンテスト会場をそっと抜け出した。

「……あれだよな、みー?」

 造船所の隣の建物の角。
 水面下の騒がしさを目ざとく見つけたが、肩のネイティに確認するように問いかける。きらりと瞳を一瞬瞬かせたネイティが小さくうなずくと、まばたきの間に一人と一匹の姿がふっとかき消えた。
 音もなく着地した扉の向こうでは、作業服の男性の足がマグマッグによって焼かれたところだった。とっさに飛び出しそうになる足を押し留めたは、ちょうどルビーが赤装束の男を伴ってかいえん一号に乗り込んだところまでを見届けて、

「あんのバカ…」

 一言低くつぶやくと扉を開けた。
 謎の男とルビー、かいえん一号が消えてがらんとした造船所内でうずくまる中年男性と、それを必死に手当てする男性、救急車を呼んでいるのかポケナビで何かを話している小柄な初老の男性。
 人間用の傷薬を取り出したは自己紹介もそこそこにけが人の応急手当だけを済ませ、無事な方の男性の手を引いて集まり始めたマスコミから逃げるように造船所を出ようとする。

「ちょっと待ってくれ、ツガくんが、」
「もうじきマスコミがきます。もう一人の人が呼んだ救急車も来るんじゃないかな。それより、俺はあなたに聞きたいことがあるんです」
「それは私たちもです!!」

 唐突に会話に割り込んできた気の強そうな声でホウエンテレビの局員と名乗った男女の二人組は男性を正面から見据えて「お話があります」と言い放ちぐいぐいと引っ張っていく。
 成り行きのまま同じように引きずられていくは、そこでようやくクスノキという男性の名前を知った。













(知りたいものは、たった一つ)