力ない己を嘆くようにうつむいたクスノキ。
 まじめな人だなあと良くわからないところで感心しながら、はとりあえずネイティをボールに戻して煙で汚れた眼鏡のレンズを拭いた。






10.親子のことわり




 特別起動部品。ツワブキ社長。謎の集団。
 当事者同士にしかわからない断片的な会話を繋ぎあわせて、クスノキの隣で壁に持たれていたは赤装束の目的を知った。
 ルビーの性格からして、あのまま潜水艇の中でバトルを続けてそれを奪いかえすなんて芸当はたとえ出来たとしてもしないだろう。ということは、潜水艇自体は赤集団の手に落ちたということ。だが、潜水艇には最も重要な部品が一つ足りず、青集団がそれを手に入れた。
 二つの集団が先を争って手に入れようとしている何か。
 ──────海底にあるもの。

「……まあ、考えるのは俺の仕事じゃないか」
「───そう言えば、あなたは?」

 ため息まじりの呟きを拾って、インタビュアーらしい女性───マリがようやく灯燕の方に向き直る。最初から居たのにこの扱いはなんだろう、とが思わず眼鏡越しに遠い目をした時、「詳しく聞かせてくれ」と聞き覚えのあるつよい声が角の向こう側から響いた。

「あなたは、トウカの新ジムリーダー!」
「センリさん」
「……なぜお前がここにいるんだ、
「仕事ついでにルビーとセンリさんを探してたんだよ」

 肩をすくめて壁から離れたを、クスノキたち3人がぽかんと見やる。あっけにとられている視線を苦笑一つで受け流して、彼はゆったりとセンリに近づく。

「ホウエンに来るって言うのは、一応連絡したんだけどなー」
「そうか…。、私の言いたいことはわかるな?」
「わかるけど、ちょっと待った。まず姉さんに連絡して欲しいんだけど」
「そんなことをしている暇はない」
「……センリさんさあ、いつか離婚されちゃうよ」

 本気であきれ返ったの声に、センリもさすがに居心地悪そうにため息をついて「・・・・後でしておく」とだけ返した。その声音を聞いて灯燕も諦めたのか肩をすくめる。
 その一連の流れを見ていたマリがあわてての肩をつかんだ。

「ちょ、ちょっとあなた、センリさんの知り合いなの!?」
「……伯父。甥」

 ぶつ切れの単語に合わせてが目の前のセンリと自分を順番に指さす。そのまま彼は納得しているのかしていないのか微妙なマリの顔を困ったように見返してするりと肩を掴まれていた手を抜け出した。
 見当はずれな期待をしてセンリに詰め寄るマリとその後ろでカメラを構えるダイをよそに、視界の端におそらくかいえん1号のものであろう計器の類を見つけたは軽やかな手付きでそれを起動させて「センリさん」と後ろを振り返る。
「───ルビーの居場所、知りたいんだろ?」

 すさまじい形相で振り返ったセンリを見ては笑った。そうしてもう一度ルビーにばかと言う。もっとも、一回目よりもずいぶんとそれは暖かな言い方だったのだけど。
 たとえ表出する仕方は違っても、子供を心配しない親なんていないのに。













(お互い意地っ張りすぎるんだ。素直になりなよ、素直に)