ルビー君は僕の恩人なんです。センリさんに追い返されて諦めかけてた僕にRURUを貸してくれたし、ポケモンの捕まえ方を教えてくれて。でも、カクレオンを捕まえた直後に地震があって……あ、最近多いんです、地震。原因はよく分からないんですけど…とにかく、すごい勢いで地面が割れて、僕、とっさに助けようと思ったけどRURUの念力すら間に合わなくて…
ルビー君は、そのまま流されちゃったんです。
彼と彼女と世界の事情
5.そんなベタな
トウカシティで出会ったミツルと名乗る少年は、見た目通りというか体が丈夫でない方らしかった。
が名前を呼んだ瞬間振り向いて飛びついてきたラルトスを追いかける途中でひどく咳き込んで座り込み、何故かはその介抱をする羽目になった。目が覚めたミツルからはルビーへのお礼と称した包みを渡されるし、挙句少年の両親にむやみやたらと感謝され、いい加減居心地の悪くなってきたは逃げるようにトウカシティを後にしたのだった。
そうして適度に拓けた森の中を川に沿って歩きながら、はちらちらと樹の隙間から見える空を見上げる。ふと足を止めてまた上を見上げると、それにあわせるようにしてスバメが飛んできた。
「おかえり、みー。なんか収穫あった?」
「メーっ!」
「そっかそっか。ありがとな」
笑いかけてスバメをボールに戻す。それをそのままホルダーに戻し、スバメが飛んできた方向をしばらく眺めていたは、ゆっくりと足元に視線を向けた。
草深い地面に囲まれた川は、地震の影響かやけに流れが早い。ミツルの両親から聞いた話だと、それほど長い川でもないということだったから、後数分も歩けば海に出るだろう。今まで歩いてきた川べりに土が荒らされたあともなかった。それはつまりルビーが途中で水から上がれなかったことだ。海まで流されたんだなあ、としみじみ考えて灯燕は濁って見えにで、僕は間に合わなくて見やる。
本来穏やかな流れであるはずのそこは、ルビーとミツルが巻き込まれたという地割れの影響だろう、ごつごつとささくれだっていて見るからに痛そうだ。
「………無事生きてるといいんだけどな」
ぼそりとつぶやいて、それは洒落にならないとは思い直す。不穏な思考を振り払うように足を進める。がむしゃらという程でもないが、それでも足取りはずいぶんと荒くなっていた。
そんな調子で歩き続けていると、ほどなくしてきらきらと光る海にぶち当たった。周りには船付き場も何もない。手掛かりを探して海の方を見つめていたは、少し離れた海の上に漁船の影を見つけ、あわてて腰のボールを放る。
ラプラス、という呼び声とともに開いたボールが一瞬光る。隙間から見えた柔らかな薄紅色をかき消すように鮮やかな青色が海上に現れた。
「みー、あの船追っかけろ!」
「キューイ」
ためらうことなく飛び乗ったを気遣うことなく急発進したラプラスだが、も特に気にせず方向を指示する。
目指すはあの漁船。
────────船のうえを飛ぶキャモメが、一声だけ鳴いた。
(確信はない。でも、予感があるんだ)
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