告げられた言葉、向けられる視線と期待。  そう言うものをあっさりと裏切って、は研究所を後にした。今自分がすべきことはそれではない、と曖昧にごまかして、それでもつけいる隙のないこわばった声で。
 残念そうに笑うオダマキには少し罪悪感を覚えたけれど、『救助』は彼の役目ではなかったのだ。





4.まちがいさがし




 ホウエン地方最初の町・トウカシティ。
 面積は小さいながらもジム・ポケモンセンター・フレンドリィショップを擁し、西に少し行くと陽光を受けて鮮やかに光る滄海が広がっている。のどかとしか言いようのない風景を眺め、は自分がここに来た意味を見直しそうになっていた。
 てこてこと横をついてくるアメタマを見失わないようにしながら辺りをぐるりと見渡す。見たところあの特徴的な帽子の影はないが、まだ探す余地はあるだろう。

「みー、ここのどこに危険があるって言うんだよ…」

 アメタマは答えない。あーあ、とつぶやいては伸びをする。引き伸ばした筋肉がたてる不快な音に顔をしかめ、バッグから小さなバッジのついた鍵を取り出した。
 よくよく見ればそれはトウカジムで手に入れることのできるバランスバッジだ。がリーグ挑戦権の証ともなるそれを鍵につけてぼんやりと指先に引っ掛けて回していたら、横のアメタマが不意に小さく鳴いた。それに首を傾げた拍子に指先から鍵が勢いよく飛び出していく。

「あっ、ばか……なんだよ、みー?」

 アメタマはその言葉に返事をせずにひたすらせわしなくの周りを回った後に鍵の落ちた先を指すように飛び跳ねる。
 仕方なく数メートル離れた見知らぬ人の足元に落ちたそれを拾おうと歩き出したところで、はその人の横に見覚えのあるラルトスを見つけた。十中八九、ルビーのラルトスだろう。ところが彼の鍵を前におろおろとたちすくんでいる姿はその従弟とはかけ離れている。柔らかそうな緑色が、気弱そうな風体の上で風に揺れていた。

「…………RURU…?」

 少しためらったあと吐き出した言葉に、小さなラルトスが頭の突起を光らせながら振り向いた。












(なぜ…?)