その日、ホウエン地方のとある空地に、一人のトレーナーと二匹のポケモンが降り立った。





1.ホウエンに彼・来る(前)




「よお───ユキナリ? そうそう俺。2カ月ぶりくらいかな、元気だった? ああ俺は元気だけど。うん、
……心配しなくてもみーもアルスも元気だっ…え? ホウエンだけど、なんか用でもあった? ───あ、ならいいけど。そーなんだよちょっとシーアー関係でさ。うん、なんかこっちまだいないらしくって。じゃなきゃ俺なんて来れるわけないじゃん」

 ポケモン学会の重鎮、オーキド博士をさらりと呼び捨て、彼は笑う。

「は? そうなの? って、ユキナリどっからそんな情報手に入れたんだよ、ルビーはノーマークだったんじゃねえの? ………あー、そっか、そのネットワークがあったか。オダマキ博士元気? そ。ならいいや。あ? いや、ほらそれはさ。んー、ああ、まあ会うかも。トウカだろ? ん、いや、姉さんから聞いて。そうそう───あァ? 理事? 知らないよそんなこと。いいじゃん俺ただのトレーナーだし。みー? いや、そりゃそうだけどさ、」

 ライチュウの収められたボールを手の中でもてあそびながら、彼は笑う。

「そう言われてもなあ、みーは俺のパートナーだし。うー、そうなんだけどさ。何とかならないかなー、と思って……あ、ハイすいません。だって嫌なもんはいやなんだよ…ホウエンに来たのだって野暮用だしさ…。みーがお告げをもらったのだって移動中だぞ? ───ああうん、他にも来てるっぽいよ。…いや、シーアーは俺だけ。わかってるだろーユキナリー。あはは、ああ、うん」

 かたわらのパートナーポケモンをなでながら、彼は笑う。

「もちろんそのつもりさ。ああ、適当に素人装ってさ。うん、大丈夫だって───できないフリは得意だからさ。ほら、ゴールドたちの時もそれで何とかなったろ? うん? ───うん、わかってるって。当たり前だろ、そうなったら俺よりもみーが危ないんだから。ああ。また連絡するよ。じゃ」

 ぷつりとポケギアを切って、彼は己のパートナーに語りかけた。

「お待たせ、みー。そろそろ行こうか」

 それに答えるようにポケモンはないて、静かに彼の横から飛び立つ。
 ひらりと舞い上がった毛色はうすべに。
 ポケモントレーナー、
 彼のパートナーポケモンは───────────────ミュウ。











(ひさしぶり、ひさしぶり、こんにちわ!!)

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