いちめんのあおと、かがやくひかり。 意識を失う前の傷が嘘のようにすっきりとした目覚めだった。 肩を苛む痛みも、血が流れていく背筋の冷たさも無い。それでも体は微塵も動かなかった、指の先すらも。 がたん、とドアの開く音がした。 「起きたか?」 食事の乗ったトレイを持ったMZDが、お行儀もよろしくドアを足でおさえて入ってくる。 そのまま彼は器用にドアを閉めて、私が寝ているベッドの脇に腰を下ろした。 「悪いな、紛らわしい帽子なんかかぶっててよ」 「……え……?」 その一音を出すのすら苦しかった。肺の上の肋骨が軋む感触。 何のことやらさっぱりわからないでいると、MZDはため息とともに件の帽子を取り出した。 それは、目が眩むようなあお。 「勘違いしたんだろう。名前を呼んだのが聞こえたぜ」 ああ、と目を閉じる。あの時視界をかすめたと思った青はMZDだったということか。 深く深く息をはくと、肋骨の軋む音と一緒に感覚が戻ってくるようだった。 何度かそれを繰り返しているうちに、指先の感覚が戻り四肢の筋肉にも力が戻ってくる。 ねえ、とMZDを呼ぶ。さっきよりもずっと声が出しやすくなっていた。 「ヒュー、は?」 「知らせた方がいいのか? 知らねえはずだけどな」 「そう……」 息をつく。安堵で涙が出そうだった。少し出ていたかもしれない。 安心したせいか、切られた腱が刺すように痛んだ。 思わず顔をしかめると、医者のように無感動な声でMZDが言った。 「どんだけ恨まれてたんだ、おまえ? 俺が見つけてよかったと思えよ、並みの医者じゃ直行コースで車椅子を勧められてたぜ」 「何をさも自分が見たように言ってるのン? 治療したのはアタシよォ」 その時、考えていたこととまったく同じことが声として聞こえたものだから、一瞬無意識のうちに声に出して言っていたのかと思った。 不自由な体を無理やり動かしてドアの方を見れば、医療に携わっているとは思えないほどあだっぽい女が腕を組んで立っていた。 声が聞こえるその瞬間まで存在がわからなかったのは、私が弱っているからなのか、それとも彼女が気配を立つ術を身につけているからなのか。おそらくそのどちらも正解だろう。 「動いちゃダメよ? まだきっとつながってないわ」 治ったら恋人だって呼んであげるから、と言った声に笑う。 呼んでしまっては意味がない。会ってしまったら”彼”を守れない。 ヒ ュ ー 、と呼んだ声は、きっと一生届かない。 (会えなくたっていい、生きていてさえくれれば)
| |