腕も足も首も心も、すべてがちぎれてしまいそうだった。 ずるりと壁に手をついて足を引きずる。 明確に腱を断ち切られた右足は、おそらくもう一生走ることはできないだろう。 不格好に体を動かしたのに合わせて、感覚のない左肩から下が揺れた。 じくじくと絶え間なくうずく。この熱の響き方からして、弾丸はまだ肩のあたりに残っているのだろう。放っておけば腕が落ちるかもしれない。それくらいの傷だった。 わかりきっていたこと。 その覚悟をあっさりと打ち砕くように”彼ら”は残酷で非情だった。 それでも、銃口を向けられた瞬間脳裏に閃いたのは、生に対する執着だとか後悔だとかそう言う類のものではなく、純粋な彼への思慕と謝罪だけだったのだ。 (………あいたい) その言葉だけが、さっきから私の頭を占領している。叶わぬ願いを夢というのなら、この思いは間違いなくそれだった。 目がかすんで耳の中から音が引いていく。踏みしめていた足からも力が抜けていって、ふと私は何故こんなにも生きようとしているのだろうと不思議に思った。 ────裏切りものには死を 丸顔の上司が気持ちの悪い笑みを浮かべて宣言した。私はそのとき逃げるのに必死で何も考えていなかった。 彼に会いたいと、ただそれしか思いつかなかった。 愚かな考えだ。彼をもすら殺してしまうというのか。 そこまで考えたところで、足の力が急激に抜けていく。そのまま重力に逆らわず倒れこんだ。 冷たい地面が心地好いが、そのぶん体から流れ出ていく血液がリアルに感じられた。 意識が混濁していく。 おわりかと、とりとめもなく思った。 (…………あいたかった) 会いたかったよ、ヒュー、とつぶやいた刹那、視界に青がひらめいた。 「………V・B?」 その声は暖かかった。 (マフィアパラレル!)(いきいき)
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