「頼みがあるのよ、リボーン」

 路地裏に立ちふさがって、我らがドン・ボンゴレを騙した女が言う。

「あたしの裏切りは発覚しているでしょう。それなのに、綱吉はまだあたしに会いに来るつもりだわ」
「あいつはあれでもおまえのことが好きらしいからな、?」
「そうね、あたしもよ。でも、きっと綱吉はあたしを殺してくれないわ」

 最後の単語を拾って顔をしかめる。
 殺さない? 天下のボンゴレによく言うものだ。
 手足の長い殺し屋はそう吐き捨ててあざ笑った。

「これがあたしの杞憂ならいいのよ、リボーン。綱吉がきちんと手抜かりなくあたしを殺してくれるなら。でも、きっと綱吉は最後まで迷うわ」

 優しい人だから、とが視線を落としてうそぶく。
 リボーンは何も言わず、とりあえず空になっていた銃倉に弾を込めた。

「そう、だからもし綱吉があたしを殺してくれなかったら、その時はリボーン、あなたがきちんと終わらせて」
「それを決めるのはオレじゃない、ツナだ」
「いいえ。あたしの終わり方を決めるのはあたしよ」
「それでも、ツナはお前を止めるだろうよ」

 引き止めてなんて欲しくないの、あたしは美しい終わりが欲しいの。
 女がぼとりと呟く。

「本当は、綱吉以外の生き物にあたしの終わり方を委ねたくないの。だから、あたしは綱吉が間違えないことを祈るわ」
「何をだ」
「天秤にかけるべきものの重さを」

 天秤にかけるものを、
 天秤がかたむく方向を、
 自分の中の天秤を、

「あなたは殺し屋よリボーン。依頼は間違いなく履行するでしょう?」
「そうだな」
「あなたがあたしの部屋に踏み込んできた時あたしがまだ生きていたら、呼吸する暇もなく殺して欲しいの」

 自殺する気はねえのか、とか、もう少し生きたいとは思わねえのか、とか。
 そんなものを全部おりまぜて、虹の呪い子はいいのかとだけ聞いた。

「あたしはもう十分生に満足したわ。それでも、自らを殺すだなんて醜い真似だけはしたくないの」

 地獄には堕ちたくないわ、とひとこと。

「だから、お願いよリボーン。ボンゴレの未来に、あたしを写り込ませないで」





もう十分すぎるほど生きたもの。







(おばあちゃんになるまで笑っている、そんな生易しい夢はもう捨ててるわ)