二重パロです。
清水玲子さんの「秘密-Top secret-」という漫画をそのままポケスペでパロってみたイロモノ。
原作がグロなので、若干それっぽい描写もあります。
「二重パロとかありえん」「グロ無理」と言う人は窓を閉じてください。
わかる人に→アバウトに言うと牧さんがルビーで青木がダイゴさんです

「そんなの関係ねぇ!」という人はどうぞ!
































 温度のない肌のうえをすべる刃物。それに合わせてゆっくりとその形を崩していく体。ぽろりとこぼれ落ちたのは心臓。震える手で掴みだされたのはまだ男を受け入れることも知らないうぶな子宮。いとおしげに撫で上げられるむき出しになった脳。瓶の中に集められた大小様々な眼球。筋肉に沿って、あるいは逆らって推し進められる刃。広がっていく血の海。
 ──────尊厳としての価値を奪われた命。


ひみつのとびら


「…待ってください。そこの、目隠しをされる前」
「ここかい?」
「そうです。解体用の机の向こうに、何か見えませんか」
「あ? これは……」

 モニターを眺めながら会話をする一人の女に一人の男、それから少年。彼らが平然と眺めている画面では、スプラッタ映画もかくやというような凄惨な死体解体が行われていた。

 西暦2075年、警察庁はMRIという技術を核にした犯罪捜査チームを結成した。科学警察研究所法医第九研究室と名付けられたそこには国の最新設備が集められ、"ある一つの目的"のためにごく少数の捜査官たちが昼夜を問わずモニターに向かう姿がある。

 "ある一つの目的"──────MRIシステムによって他人の脳を覗くために。

 進んだ科学力は死亡した人間の脳を覗くことまで可能にした。人はモノを『見る』時、まず目でその画を取り込み、次に脳でそのモノが何なのか判断する。つまり、脳にはその人間が死ぬまでに見たモノがすべて記録されているのだ。たとえ本人が思い出せない記憶でも、脳から消え失せたわけではない。そして、からだから切り離されたのち数時間は、脳も「生きている」。
 死亡後10時間以内に脳を損傷のない完全な状態で取り出しMRIスキャナーにかけ一定の電流を流す。するとスクリーン(あるいはモニター)にはその脳の持ち主が死ぬ前に見た光景が驚くほど鮮明に映し出される───MRI捜査というのは、そのMRIスキャナーを使って通常の捜査ではわからなかった事件の真相を暴いていくやり方のことだった。
 数年前に警察庁で正式に導入が発表され、倫理的な問題などからもずいぶんと様々な意見が飛び交い、驚きや畏怖とともにその認知度を一瞬で上げた「第九研究室」だったが───、
 そこの室長がまだ二十歳にも満たない少年だということは、当然ながら当人たち以外には警察上層部にしか知られていない。




「ルビーくん」
「………どこに行ってたんですか、ダイゴさん?」
「え、いやあの」
「ボクやカガリさんたちがこーんなに真面目に働いてる時に、一人でいったい何処へ?」

 にっこりとうわべだけの美しい微笑みをたたえてルビーが振り返った。片手にアイスの詰まった袋を下げて立ちつくすダイゴに、モニターを眺めていたホカゲも振り返って笑う。

「そーだそーだ。わかったら早くそれよこせ。俺ハーゲンダッツのストロベリーな」
「そーだそーだって、買って来いって言ったのは君じゃないか…!」
「うるせーな、先輩の言いつけには黙って従ってろよ、新入り」
「ホカゲさん……」
「こんなとこでずっとこんな画見てりゃ気が狂う。たまには息抜きも必要だぜ、"室長"?」
「…………………」

 面白がるように呼び掛けられたその単語に、ルビーは目一杯いやな顔をしてみせた。
 ダイゴやホカゲやカガリといった捜査員の大半は20を過ぎたばかりの新卒者ばかりだ。しかも、一番大きな権限を持つ「室長」はそれよりも幼い。着任時は声も出せないほど驚いたが、二週間もすれば慣れてしまう。少年がどんな経緯で今の地位にいるのかなんて、新入りのダイゴにはわからない。わかっているのは二つだけ。
 ルビーは去年起きた連続猟奇殺人の犯人の「脳」を見て、それを見た4人の捜査官のうち、ただ一人生き残った人間なのだ。

「…わかりました。じゃあアイス食べたら再開にします」
「本当にいいのかい? まだ全部見終わってないだろ、この画」
「じゃあカガリさん、ホカゲさんを説得してくださいよ」
「あたし抹茶バニラもーらい」

 ため息とともに吐き出されたルビーの言葉に、カガリは何事もなかったかのようにアイスへ手を伸ばす。
 気づかないうちにもう2個まで減っているアイスを見て、諦め顔で適当な一つを手にとった。ミックスベリーとラべリングされたそれをぱくりとひとくち食べたところで、ホカゲと低レベルな言い争いをしていたダイゴがやってくる。

「この間来たばかりの割に、妙に仲良しですよね。ダイゴさんとホカゲさん」
「ええ!? 気持ち悪いこと言わないでよ!」
「おおそーだもっと言ってやれダイゴー」
「単に大学のゼミが一緒だっただけ。こんなとこで再会するなんて思ってなかったよ」
「そりゃこっちのセリフだ」
「ちょっと黙っててくれないかなあ君…」
「ルビー。ガイシャが最後に見たの、多分隣町の廃工場だ」

 ひやり、と空気が凍った。

「……え…?」
「この間仲間内で遊びに行った近くだから覚えてる。多分な」
「根拠はどこですか?」
「さっきおまえの言ったこの後ろだよ。ここに、変な器具があるだろ」
「ああ・・・・・これが、その廃工場にあったんですね」

 納得したような言葉のあとに、場所の確認と捜査員の派遣が命じられる。同じ器具をおいている工場は他にもあるだろうが、その共通点を見つけるだけでも捜査の進展にはなる。
 にわかに慌ただしくなった部屋の中を見渡して、ルビーはため息とともに食べかけのアイスを脇においた。続きを食べられるのはこの事件が片付いてからだろう。
 ばたばたと数名の捜査員が小走りで部屋を出ていく中、ホカゲは一人平然とアイスを食べながらモニターを見続けている。カガリは別のパソコンの前で工場主の会社を割り出していた。自分だけ呆けているわけにはいかないとルビーがモニターの電源を入れてホカゲと同じ画を見始めると、隣のダイゴがゲッとのけぞる。
 泣いているのか不自然に歪んだ視界の中で、覆面をつけた男が女性の体を丁寧に分解していた。

「…やっぱり、ダイゴさんこの仕事向いてないですよ」

 苦笑いでルビーが言う。
 悔しさからか、ダイゴはムキになってモニターの前───ルビーの横に椅子を持ってきて腰かける。

(……君だけに、)

 その先は心の中でも呟けずに消えてしまった。
 君だけにこんなつらいものを背負わせるわけにはいかない、だなんて。
 そんなこと言ったら、彼はきっと怒るのだろうけれど。





07/10/14
(もうすべてが適当です)(何かダイゴさんとホカゲの関係がオーバとデンジみたいになってきた)
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マリー・テレーズ