灯台でおかしな子供にあって、なんだかいつになくわくわくした気持ちでジムに戻ったデンジは、入り口のところでヤンキーよろしく座り込んでいるアフロを見つけてめいっぱい顔をしかめた。
「うっわア、何してんだよモジャモジャきもいモジャモジャ」
「モジャモジャって言うなー!」
がばっと立ち上がったオーバにデンジはさらにいやそうな顔をする。
「うっせえモジャモジャ。で? 何してんだこんなとこで」
「おまえを待ってたんだよ!」
「そうかストーカーか」
「違うわ!」
「おまえ叫んでばっかで疲れねーか?」
誰のせいだ、誰の・・・・・・・!!
上辺だけは本気で心配しているような顔で覗き込んでくる古馴染みにオーバはがっくりと肩を落とし、ふと何かを思い出したように顔を上げる。
虚をつかれて思わず動きを止めるデンジに、オーバは底意地の悪い笑みを浮かべた。
「そーいや、デンジおまえ、チマリとはどーなったんだよ?」
「あ?」
「まさかもうBまで行ったり?」
「小学生かおまえ」
ため息まじりに、デンジは本気で呆れた顔をする。オーバは気にした様子もなく訳知り顔でデンジの肩をたたいた。
それから何を言うのかと構えていたデンジに顔をぐっと近づけて、
「・・・・・・・・・ろ・り・い・た・こ・ん・ぷ・れっ・く・す」
「・・・・・・・・・・・」
(うわあ、こいつは本物の馬鹿だ・・・・・・・・・)と、デンジが思ったかどうかは定かでないが、少なくともそれに近い感情を抱いたことは間違いない。目の前のアフロのせいで高揚していた気分も台無しだ。
むしょうに腹の立ったデンジは、だらりと脱力するに任せていた両手を持ち上げて、力の限りにオーバのアフロを引っ張った。両側から頭の皮膚が引っ張られる痛みでオーバの目に涙が浮かぶ。
「あだだだだだ! 何すんだこのロリコン!」
「うっせえアフロコンプレックス。チマリは関係ないだろうが」
「アフロコンプレックスってなんだよ! とっ、とにかくっ、離せ! いって!」
デンジが少しだけ満足して手を離すと、頭を抑えて涙目のオーバが睨んでくる。
「傷害罪って知ってるか、デンジ・・・・・・・・」
「・・・・ストーカー規制法って知ってるか、モジャモジャ?」
「チマリに言いつけてやる・・・」
「思考回路がいちいち小学生なんだよクソアフロ」
「アフロじゃねーよ天パなんだよ!」
「天ッ・・・・・・・・・・!?」
ナギサシティの青い空に、笑い声と涙まじりの叫び声が響き渡った。
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