最近の俺はもーれつに機嫌が悪い! 何に腹が立つって、悩むだけ悩んで結局何もできないと俺と、どうせ全部知ってるくせに何もしないあいつと両方に決まってるだろぃ! Breakin' Through──― 「おはよーさん」 「……ハヨ」 気持ち乱暴にロッカーを閉めてあいさつを返す。あからさまに寝起きの顔をした仁王は、時々あくびなんかしながら俺の横のロッカーにかばんを突っ込んで着替え始めた。 ほかのレギュラーはいない。もうみんなとっくに着替えて自主練を始めている。ちなみに俺はとりあえずランニングだけして逃げてきたところだ。 仁王は立海レギュラーで2番目に遅い。着替え終わる頃に朝連が始まるように計算してぎりぎりの時間に来るからだ。(ちなみに1番は当然遅刻常習犯の赤也。あいつはそろそろ幸村に呪われるべきだと思う) 「なんじゃ、ブンちゃんだけ?」 「あたり前だろぃ。今日はおまえが最後!」 「珍しいの、赤也は来とるんか」 「おー」 くわえていたいちごポッキーを噛み砕く。甘ったるいチョコの匂いとニセモノっぽいいちごの味がたまんねーなやっぱ。春はいちごポッキーの季節。 パイプ椅子に座ったまま5本目を飲み込んだところで、着替え終わったらしい仁王が、開けっぱなしにしていたポッキーの箱からごく自然な動きで一本だけさらっていった。 一瞬だけとても近くなった距離に思わず動きを止めてしまった隙に、奴は俺の大切な大切ないちごポッキーを奪っていきやがった。じとりと睨みつけると口の端でポッキーをかじりながら仁王があいまいに笑う。ざけんな、とどついて、俺はパイプ椅子から立ち上がった。 「仁王おまえ今度なんかおごれよ」 「ポッキー一本くらいそうケチ臭いこと言わんで恵んでくれたってかまわんじゃろ」 「しんじゃえばかやろー」 「…もう行くんか?」 「時間見ろ、時間。真田がキレる!」 「朝っぱらからそれは勘弁じゃの」 ちっともそうは思ってない口調でのんびりと仁王が言って、扉を開けた俺の横に並んだ。「晴れるかのー」なんて言いながら曇り空をうかがうように身を屈める。ふいに近くなった顔にどきりとして、反応したいまいましい心臓に舌打ちした。 どこの女子だ、俺。いらいらする。 全部言ってしまえば決着がつくことなんてわかりきってる。でも言えないのは結局怖いからだ。 男が男を好きになることが世間一般では正常じゃないことくらいわかってるから。 「しんじゃえばかやろー」 「なんじゃいきなり。俺は何もしとらん」 「わかってんだよばーか」 小学生レベルの罵りを口にして小走りに仁王の先へ行く。追いかけてこない仁王に何となくがっかりして、ぼんやりと曇った空を見上げた。 「ちっくしょー」 晴れたら告白してやる。だからさっさと晴れろぃこのばか空! ──現状をぶち壊せ! (ニオブンというよりはニオ←ブンちゃん)(可愛いブン太が書けない)
|